祖父の庭には、いつも静かな気配が漂っています。
風が止まると、草木の影がゆっくりと沈み、記憶が水面に浮かび上がるように感じられる。
8月の読書室では、その気配と響き合う一冊をそっと開きました。
長い時間を旅してきた本は、ページの隙間に小さな痕跡を残しながら、
まるで庭の片隅で息をしている古道具のように、静かに物語を語り始めます。
ここでは、そんな“記憶を宿す本”をひとつ紹介します。
『古書の来歴』は、数世紀を旅してきた一冊の古書──
サラエボ・ハガダーの来歴を、古書鑑定家ハンナが解き明かしていく物語。
羊皮紙に染み込んだワインの跡、挟まれた蝶の羽、紙片についた塵。それら小さな痕跡から、本が辿ってきた数百年の旅路が静かに浮かび上がる。
物語は、1990年代のサラエボから、1800年代、1600年代、1480年代へと遡りながら、本を守った人々の人生と時代が重層的に描かれている。
科学調査による謎解きの妙と、戦火を生きた人々の記憶が重なり合う、第2回翻訳ミステリー大賞受賞作。
『謎解き 超常現象』は、世に語られてきた不可思議な現象を、科学的検証と資料調査によって再評価する一冊である。
UFO、心霊写真、怪雨現象など、超常とされる事例を42項目に整理し、伝承・誤解・錯覚・情報操作の構造を明らかにしている(内容紹介より)。
本書は、超常現象を否定するためではなく、事実と解釈の境界を静かに見極めるための知的態度を提示するものである。
『霊界の書 ― 世界の幽霊・怪奇譚・超常現象』は、世界各地に伝わる霊的存在や怪奇譚、超常現象を体系的に整理したビジュアル読本である。
古代の死生観から中世の霊との邂逅、近代オカルティズム、そして現代の怪談文化に至るまで、人類が「人ならざるもの」をどのように理解し、記録してきたかを図版と資料を用いて俯瞰的に示している(内容紹介より )。
本書は、霊的伝承を刺激的に語るためのものではなく、民俗学・宗教史・文化史の観点から、超常現象の位置づけを静かに再考するための資料として有用である。
WRITER この記事の著者
久遠迪知 沖縄の神んちゅ/kindle作家
2年で10冊出版を目標に執筆中。 沖縄の霊能者として30年の鑑定歴。霊査。日本の精神史・神話・民俗伝承を長く研究し、現代人が受け取りやすい形へ再編集することを専門としています。 体系的な知識と現場の体験から本質だけを抽出。地に足のついたを情報発信。